今年も多くのメタルバンドから様々なアルバムが販売され、海外のロック/メタル専門雑誌や大手サイトにて評価されました。
この記事は、今年一年海外で絶賛され、”2016年度ベストアルバムランキング”やら”優秀なメタルアルバム○選”などに、名前が上がり見かけることの多かったアルバムを4枚ピックアップし、簡単に紹介していきたいと思います。
以前”今年話題となったアルバム10選”といった記事を書きましたが、あれはこのサイト内で取り上げた中での話なので、今回選んだアルバムが本当の意味で世界的に話題となった作品に近いと思います。
“日本で名が通っている有名なベテランバンドの作品”は、この記事ではあえて取り扱っていません。
・GOJIRA 「MAGMA」
ジャンルは一応プログレッシブ/グルーヴ/デスメタルとなっている、フランスのバンド“GOJIRA”(ゴジラ)の6thアルバム「MAGMA」
見渡した限り、最も多くのメタル専門サイト・雑誌の今年度ベスト候補に挙がっているアルバム。
決して複数で1位に選ばれている訳ではありませんが、審査基準が異なるランク付けで、必ずと言っていい頻度で名前を見る辺り、今年度のベストアルバムの一角であることは間違いないのでしょう。
日本ではあまり名の聞かないバンドですが、”新曲の再生数”や”Amazon usaでのレビュー数”から見て、海外ではかなり評価され名前が知られているバンドだと分かります。
このバンドについて音楽性について、分かりやすい記号的な言葉だけでは伝えるのが難しいのですが、無理やり簡潔に書くとしたら
怒号のような攻撃的でありながらメロディをしっかり感じるボーカル、スラッシュメタル的なザクザクと鋭いリフや、ゴリゴリとへヴィでグルーブ感あるリフ、変則的なリズムやフレーズの使用、大胆なリズムチェンジやブレイクでガラリと雰囲気を変えながらも違和感なく繋げる精密な曲展開。
部分部分は既に使われた手法ではありますが、全体的には過去のどのバンド風とも言えない、オリジナリティを感じさせるプログレッシブ/グルーヴ/デスメタルバンド。
・今作についての感想など
そんなGOJIRAの今作MAGMAですが、全体的には好評な意見が多いながら、批判的な意見も一定数見られます。
実際過去作と聴き比べると、今作ではスローテンポの曲が大半を占め、攻撃的なデスボイスよりもクリーンのボーカルが中心、ギターリフはおとなしくドラムの手数が減り、メタルとしての攻撃性が大きく減衰したことが分かります。
必ずしもアグレッシブな部分だけがメタルの魅力だとは思っていませんので、今作を私自身作業しながらの聴き流しも含めこの作品を何度も繰り返して聴いたのですが
変則的でスリリングな展開や、意外性を感じさせる音の選択というのも多くは感じられず、あっさりと40分が過ぎていく印象というのが正直なところ。
勿論通して全く魅力を感じないわけではなく、Standed”は聴き返していくと思っていたよりも中毒性があり、”Silver”や続く”The Cell”に”Only Pain”といった曲も良いと感じました。
しかし、前評判からハードルを上げすぎているのか聴き込みが足りないのかもしれませんが、どうも個人的には物足りなさを感じたアルバム。
ただ、このバンドに関しては環境問題などの風刺的なテーマを用いるので、単純な音楽性だけでなく曲のテーマも把握しての評価もあり、単純に音楽的な部分だけ切り取っても判断できない作品なのではないかと現在捉えています。
・KHEMMIS – HUNTED
前作「ADSOLUTION」も2015年の優秀なメタルアルバムに多く選出されていた、アメリカのドゥームメタルバンド”KHEMMIS”の2ndアルバム「HUNTED」
GOJIRAの「MAGMA」には劣るものの、このアルバムも最も多くメタル専門サイト・雑誌の今年度ベスト候補やらランク付けで目にしたアルバムです。
前作もかなり好評だったようですが、日本では受けの悪いと思われる”ドゥームメタル”であり、デビューして間もない為か、このバンドも殆ど日本では名の聞かないバンドですね。
・今作についての感想
何度も通して聴き返した印象では、ボーカルはしっとりとした”クリーン”を中心とし、時折デスボイスも使っていくスタイル。
歌メロにギターリードやソロからは特に目新しさはなく、伝統的なロックロール・ロックのリズムやフレーズに、民謡調とも取れるメロディも時折聴かせ、通して強い哀愁を持った作風。私の中ではどことなく”AMOLPHIS”なんかと似たニュアンスを感じます。
フレーズの一つ一つがとても印象に残り、ミドル・スローが多いのですが、個人的には意外に好みの作風で好印象でした。
ドゥーム故にスピード感がありインパクトのあるアルバムではありませんが、思っていた以上に広いメタル・ロック好きにお勧めできる良盤ではないかと思いました。
・VEKTOR – TERMINAL REDEUX
2013年にはJAPANESE ASSAULTFEST13にて来日しライブも行った、アメリカのプログレッシブ/スラッシュメタルバンド”VEKTOR”の、5月18日に販売された4thアルバム「TERMINAL REDUUX」
上で書いている通り、正直GOJIRAのMAGMAが突き抜けて人気なのですが、こちらも雑誌の今年度ベスト候補やらで好評の目立つベストメタルアルバムの一角。
・今作の感想
疾走感溢れる曲調に、これでもかと畳み掛ける縦横無尽でテクニカル・スリリングなスラッシュ・ブラックやらが入り混じるリフ・ドラマチックな展開を演出するメロディアスなギターリフやリードと、上記2作に比べればかなり日本での受けも良く、私個人一発でこれは格好良いと感じさせた作品。
全体的に7〜9分程の長尺な曲が多く、中にはクリーンのアルペジオを入れたパートやテンポを落としたパートから入る曲も見られますが、その後徐々に熱く変化していくの展開も格好良い。
プログレッシブとカテゴライズされている通り、確かに変化をつけた展開も見せるのですが、テンポを落とし静寂的なパートで冷めるといった印象はなく、通してテンションの高い作品です。
入りから終わりまで本当に素晴らしいクオリティを見せてくれたアルバムであり、刺激的なメタルを期待する方には強くお勧めします。
そんな絶賛しているVEKTORですが、なんと先日所属メンバーのErik Nelson(Gt.)・Frank Chin(Ba.)・Blake Anderson(Ds.)が脱退したとのニュースを目にしました。
普段加入脱退については取り扱わないので書きませんでしたが、これほど素晴らしいアルバムを作った矢先これからどうなるのか気になりますね..
レコード会社で公開されていたフル試聴可能な再生リストです↓
・COBALT 「SLOW FOREVER」
アメリカのブラックメタルバンド”COBALT”の、7年ぶりに販売された4thアルバム「SLOW FOREVER」
メタル自体のジャンルの細分化や、取り扱う雑誌やサイトでプッシュされる作品の色合いの違いもあり、正直上の3作品に比べると、横一線といった感じで4枚目を決めあぐねていました。
そんな中とりあえず統計を取ってみたところ、一番名前が挙がっていたのがこのアルバムでしたので選ぶことに。
今回思いつきで始めた記事でしたが、候補を挙げ選んでいき、それらを改めて一つ一つ通して聴くのに思っていた以上に時間がかかり、バンド側の作品に対してのテーマや試みなどに触れらるまでには至らず、深く切り込むことができないのが少々悔いです。
時間の都合からやや限定して4枚を選びましたが、来年?は余裕があればジャンル別により多くの作品について触れたいと思います。
以上”2016年 海外で高く評価されたメタルアルバム”でした。