ORPHANED LAND - MABOOL レビュー・感想

今日はイスラエルのフォーク/プログレッシブメタルバンドORPHANED LAND(オーファンド・ランド)の、2004年に発売されました3rdアルバムMABOOL:The Story of the Three Sons of Sevenをレビュー&紹介をしていきます。

MABOOLは高い完成度からイスラエルというメタルとしてはマイナーな国のバンドでありながら、“ORPHANED LAND”の知名度を上げた傑作的アルバムです。

 

・中東のエキゾチック/オリエンタルな雰囲気を出したプログレッシブメタル
デスボイスと特徴的な歌唱のクリーンボイスを切り替えるボーカル。
ギターにその他民族系の撥弦楽器やクワイアでの異国情緒溢れるフレーズやパートを織り交ぜるのが特徴的です

通して彼らの出身地である中東のエキゾチック/オリエンタルな音楽性を感じます。

フォークメタルの枠組みにも入ると思いますが、複雑で変化的な展開を含んだ曲調から、基本はプログレッシブメタルに感じます。

・特徴的なスケールを使いつつもロック/メタルとして高いレベルで調和した作品
通して特徴的なスケールを使用したフレーズやパートが聴かれますが、それらがロック/メタルのバンド形式やサウンドの中に、非常に高いレベルで調和しています。

アクセントとして異国情緒のあるフレーズを使用するバンドは多くいますが、この作品はそれらが溶け込むように混ざり合っています。

・民謡調の特徴的なボーカルの歌唱
デスボイスに関しては独自性は感じませんが、深く引き込まれる様な民謡調の歌唱のクリーンボイスはとても特徴的です。

デスボイスと交互に現れる特徴的なクリーンボイスによるメロパートは独特の世界観を感じます。

・異国情緒あるものからオーソドックスなリードまで弾くギター
スケールで言えばフリジアンや時折HMP5B等を使った、湿っぽい異国情緒あるリフやフレーズも聴かれますが、そういった変則的なものだけでなく、オーソドックスなロック/メタルの泣きや哀愁を感じさせるソロやリードも多く聴かせてくれます。

アコギ(別の弦楽器も含まれていると思います)でのフラメンコ調のインストや演奏も見られます。

・アコースティック楽器を使った効果的なアレンジ
“シタール”や”ブズーキ”や”ウード”といった撥弦楽器で民謡調の雰囲気を強く出しています。
それらだけでなく、ピアノも楽曲中に頻繁に使用し、楽曲の美しさやドラマ性を強くしており印象的です。

各曲の印象や感想。
アルバム MABOOL 曲目
1 Birth of the Three
2 Ocean Land
3 The Kiss of Babylon (The Sins)
4 A’salk
5 Halo Dies
6 A Call to Awake
7 Building The ark
8 Norra el Norra
9 The Calm Before The Flood
10 Mabool (The Flood)
11 The Storm Still Rages Inside
12 Rainbow (The Resurrection)

1 Birth of the Three
フリジアンスケール等による暗く異国情緒あるフレーズを多用しながらも、ドラマチックに展開していくオープニングナンバー。

デスボイスから特徴的な歌唱のクリーンボイスに切り替え、ドラマチックに流れる様に展開するサビパートが印象的です。

ボーカルと共に世界観を作るキャッチーなギターのフレーズもとても良い。

長調への思い切った転調で明るくガラリと雰囲気を変える中盤、異国情緒ある盛り上がりを見せる終盤まで通して素晴らしい曲です。

2 Ocean Land
イントロからメロパートまで通して民族系の撥弦楽器を使い独特なフレーズ回しでエキゾチック/オリエンタルな雰囲気をだした曲。

この曲も前曲同様デスボイスで歌うAメロから特徴的なクリーンのボーカルへ切り替えが特徴的ですが、サビパートはより印象的で、引き込まれる独特の美しさを感じます。

中盤でのギターソロは変則的なものではなく、オーソドックスで深みのあるもので、とても味わいがあります。

3 The Kiss of Babylon (The Sins)
デスボイスのボーカルとヘヴィなギターで重厚な入りをする曲。
コントラストを出したクリーンのボーカルや女性ボーカルによる歌唱を含みつつも、スロー・ミドルで重厚に進んでいきます。
軽やかに「ラーララ ラーララ ラララララ」と歌うパートや女性ボーカルの独唱も入るのが特徴的です。

4 A’salk
女性ボーカルによる歌唱から撥弦楽器にパーカッションによるオリエンタルな雰囲気の2分程の曲。
通してバンドサウンドは入らず、どこか映画のBGMの様な曲です。

昔見た映画 「キングダム・オブ・ヘブン」で似たようなBGMが流れていたなと感じました。
あれもエルサレム(イスラエルの都市)を舞台にした映画なので、雰囲気的に似るところがありますね。

5 Halo Dies
デスボイスとクリーンボイスによる劇的な展開や節々で聴かれるメロディアスなギターのフレーズが印象的な曲。

HMP5Bスケールを意識させるフレーズにデスボイスを絡めたエキゾチックで攻撃的なパートから、対になる様に現れるアイアン・メイデン等を思わせるキャッチーなギターのフレーズをバックにしたドラマチックなサビやギターソロパートがとても印象に残ります。

終盤の希望的な雰囲気を出して劇的に終わる感じもとても良く、どこかドリーム・シアターに似ている様な感じがしました。

6 A Call to Awake
メロディアスでドラマチックな展開の前半からスリリングなインストパートの後半へと進むプログレッシブな曲。

前半はヘヴィなギターリフをバックにクリーンボイスでのドラマチックな展開をし、イントロやブリッジで入るキャッチーで哀愁を感じるギターは印象的です。

前半の締めとなるギターソロパートが終わると、デスボイスの咆哮から複雑にリズムチェンジをし、目まぐるしく場面変化するスリリングなインストパートが続く後半へと進みます。

前半のパートもソロを含めてとても良い出来ですが、後半の畳み掛ける様に変化していくプログレッシブなパートも素晴らしい。

7 Building The ark
4曲目A’SALKともまた違う民族調の色合いの強い曲。
パーカッション楽器やピアノに撥弦楽器、民謡調な女性ボーカルと男性ボーカルのクワイアが入り混じる曲です。

後半のフラメンコ調のメロディアスで物悲しく湿っぽいフレーズの流れは美しい。

8 Norra el Norra
アコースティックギターをバックにヘブライもしくはアラビア語での異国上チィ溢れる雰囲気の歌メロから入る曲。

デスボイスは使わずクリーンのボーカルでの、母国語で歌い続けるメロパートは独特の世界観へと引き込まれます。

前半がとてもインパクトがありますが、中盤過ぎからエンディングまで続く浮遊感を出したピアノソロはとても美しい。

9 The Calm Before The Flood
アコースティックギターを使いフリジアンスケールを主軸とした暗く湿っぽいフレーズが弾かれるインスト曲。

雰囲気をそのままに途中からはギターの音色が変化し、途中からはストリングスが入り物悲しさを強く感じさせます。

10 Mabool (The Flood)
激しい雨音や雷鳴の轟きから荘厳なストリングスによるオケが入り始まるタイトルトラック。

ストリングスは徐々にフェイドアウトしディストーションサウンドのギターと入れ替わり本編へと続きます。

メロパートでは変化するメロディアスなギターのリードをバックに、デスボイスや特徴的な歌唱でのクリーンのボーカルが入り混じる劇的な展開を聴かせてくれます。

語りやSEを交え複雑に展開していくとてもドラマチックな曲です。

11 The Storm Still Rages Inside
前曲Maboolからフレーズを引き継いで始まる9分に及ぶ大作。

所々で波の音や叙情的な歌メロや語りを挟みつつ、哀愁や泣きを感じるギターのソロが6分程まで展開され続けます。

6分30秒で一旦ブレイクし雰囲気をそのままに、アコギによる同じく湿っぽいフレーズから切ないボーカルが入り、ラストは聖歌的なクワイアから波の音で締めます。

Mabool (The Flood)から流れを引き継ぐ、これも劇的でドラマチックな曲です。

12 Rainbow (The Resurrection)
鳥のさえずりや自然の環境音をバックに、通して聴かれた湿っぽいアコギによるアルバムラストのインスト。

希望的な終わりとも悲劇的とも捉えにくい旋律を奏でていますが、どこか癒しを感じます。

参加メンバー
ボーカル KOBI FARHI (コビ・ファーヒ)
ギター YOSSI SAHARON (ヨッシ・サッシ)
キーボード EDEN RABIN (エデン・ラビン)
ベース  URI ZELCHA (ウリ・ゼルカ)
ドラム  AVI DIAMOND

彼らの出身地の中東の音楽的要素とヘビーメタルが高い次元で調和した作品であり、間違いなく傑作の一枚です。

異国情緒あるメタルに興味がある方からそうでない方まで広くおすすめです。